瑠璃 (Sapphire)

This reading was recorded by Alessandro Mistrorigo for Phonodia at Villa del Grumello in Como, Italy, the 9th of May, 2015, during the “Europa in Versi” Poetry Festival organized by “La Casa della Poesia di Como“. Special thanks to Laura Garavaglia.

Read by Taeko Uemura on 9 May 2105

瑠璃 (Sapphire)

水の中で焔が静止する
そこで音のない冷たさに
身をたじろがせ
言葉は終り
無音のままで瑠璃を見つめる

あまりに悲しいとき
なぐさめの材科さえ持てず時間を崩解させ
深い樹々のあいだの
夜を貫くものだけに頼って
ひたすら通り過ぎるのを
ただ待つしかないのだろうか

悲しみの理由をわかりたくない
それは知るよりも前に
ひっそりと静かに
遠くに小石を放り投げるように
誰にも告げずに
返す言葉もなく
ただ少しだけ微笑して
忘れられた海を渡り
立ち去って
何もなかったように身をこなし
湖の上で風に吹かれよう

悲しみの色は
と聞かれたら
口をつぼめて
ゆっくりと返答したい
るり
るり
瑠璃 と

透きとおった湖水の青さに
いつしか酔うことができたなら
やわらかに涙を流し
集めた失望を
静かにひそやかに瑠璃の谷へ落す

それを祈りのように
そして呪文のように
瑠璃と つぶやき続けるとき
思いに耽った青緑の光が
ようやく玉の露となって
逃げ出してゆく苦痛を
ゆっくりと拭いながら
まだまだすべてを失ってはいない
という別の呪文を
想い起こさせ
満たしてくれる潮のように
親しげに見守るもののように
暗い森を照らして
狭い小道を歩いてゆける

from To a Serendipity Muse (Kyoto: Japan Universal Poets Association, 2013).

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